漫画を描いている方やイラストレーターが困ることは資料にない
ポーズを表現しなければいけない場面に出くわした時に
描けなくて困ってしまう経験ってあると思います
ところがアニメーターはどこから見たアングルでも表現してしまいます
どうして?
アニメーターがみんな最初からどのアングルでも描けるわけではありません
仕事をしていく中で描けるようになっていったのです
松田のアニメータースタートはみゆきプロダクション
右も左もわからない東京に出てアニメ月刊誌に出ていた募集を見て
そこで働き始めました
アニメーターは動画からスタート
動画とは先輩が描いた原画をなぞりその間の絵を埋めていく仕事
たとえば椅子に座っている人が立つ演技があったときに
座っている絵と立っている絵の二枚だけが描かれていてその途中
の動作を描いていくのが動画マンの仕事です
動きの途中の絵といってもきちっと描かなくてはならず
仕上がるまで提出はできません
最初のうちはやり直しになったり何度でも描き直しているために
なかなか提出出来ません
人物振り向きの場合は下の横顔が原画
正面顔が原画
その途中が動画
動画マンでも途中の絵はしっかり描けないといけません
ところがアニメーターなりたての時に
描けるはずもなく1枚描くのにとんでもなく時間がかかるのです
それを許してくれないのが
描けばお金がもらえます
出来高制で1枚単価50円
1日何も描けなかったら0円
テレビアニメーションでしたので放映日という締切が有り
動画が間に合わない場合描くのが早い先輩に取り上げられてしまいました
松田の初任給は3500円でした
それでもテレビの字幕に自分の名前が出て喜んでいたのです
しかし生活できるわけがありません
必死で枚数上げるためにも提出出来るレベルで短時間で描く必要がありました
初仕事はアタッカーYouでした
夜遅く家に帰ってきてもキャラクター表を見ていろんな角度からでも描けるよう
練習しました
でも結局そう簡単に早く描けるようにはなれず生活費のなさで
みゆきプロダクションをやめざるを得ませんでした
東京住まいにすこし慣れ
実技試験をしてくれたのですがダメ出しが出てそのあとの面接で
お情け入社となりました
ここでの動画1枚単価は180円でした
えっ みゆきプロ超安かったんだ
とはいえ虫プロも出来高制でした
最初の1ヶ月で560枚描きました
やっと十万円
とにかく早く上手く描くことを心がけていないと
生活できないのです
休憩時間もキャラクターの練習
三日に一度は会社にお泊り
1日16時間絵を描いていました
動画マンはこれを3年続けるのです
僕だけが特別苦労しているわけではなく
これが一般的な話でした
大体田舎から出てきて飛び抜けて才能がない人間なら
アニメ業界では普通の話なのです
約3年たって原画マンに昇格しました
今度は白紙の状態から絵を描くわけですから
難易度が一気にアップします
2年ぐらいは苦しみ悶えます
中途半端に空間を把握していても部屋の中にいる人物すら描けないのです
2年間で頭の中でしっかり
映像にはあらゆる角度の動きや描写が要求されます
動画も含めた
ようになっていくのです
その経験で松田は作品に生かしています
虫プロに入って10年以上たった時に
新人の研修期間3ヶ月を
アニメの専門学校を卒業して入ってくる子が多かったです
当たり前ですが100パー絵がうまかったです
代々木アニメ専門学校を出てきた子は実戦形式の動画授業があったとか
でもプロはやっぱり違うんです
っていうのを面倒見てて感じました
まずプロはスポンサーからまわりまわってお金をもらっています
妥協が許されませんし妥協したくもありません
持っている実力を出し切ることをずっとやってきたのがプロ
そういう目で見るとあまあまな仕事内容にしか見えません
3ヶ月では短すぎるのですが
一つの課題をとことん突き進めることをやりました
そこまでやるかって感じ
こういう仕事環境があるからこそ
人物を360度どこからでも描けるようになるということなのでしょう
そういう仕事環境にない人はきちっと描けるようになりたい
と自分を追い込めるかにかかっているでしょう
あとインターネットでポーズって検索するだけで多種多様な資料が出てますね
ポーズマニアックスとか
本屋でハイパーアングルポーズ集見つけました
今は資料が充実しているので練習しようと思えばいろいろできると思います
ただ写してもだめで空間を把握して
頭の中でグリグリ動かせるレベルになるといいのですが
ポーズ集といっても自分のニーズと一致しているとは限りません
結局少し角度を変えないと使えない場合の方が多いのです
松田は自分ひとりでは全然追い込めませんでした
アニメーターになる前アニメ雑誌のキャラクター適当に模写して
上手く描けたなんてやってた程度
虫プロにいい先輩方々がいたからこそがんばれたのだと思います
虫プロにいた一生の財産は
今私は虫プロから離れ油絵の制作が中心になっていますが
芸術の世界に上限はなく難しい世界だなあと思います
でも気持ちだけは同じようにやっていけたらなあと思っています
キキが出ているのは?
動画マン時代ジブリの仕事をしたからです
その理由は
のページで少し説明しています
すってんころりん制作過程