• アニメーター兼油絵家

    中学2年夏休み図画の宿題母ちゃんの盆栽描いた

    遠い昔の話しだ

    母ちゃんはこの世にはいない。盆栽もない。後ろの建物もない。写真もない。あるのはこの一枚の絵だけだ。出さなかったわけだから誰にも見られることなく自分の手元にあるだけだ。正確に言えば夏休みが終わって色のまったくついていない状態で1度女の先生に見せた。よくかけてるね。その一言はうれしかった。でも仕上げて持ってきて

    ・・・・・

    ショックだった。仕上がるかな

    鉛筆画じゃダメなのか?色つけないと作品じゃないのか?チラチラっと思ったが、主張できるわけもない。気を取り直して左上から塗り始めた。木目を描いている時に鉛筆画より何倍も時間がかかることがわかった。

    無理

    鉛筆画の段階はとても楽しく描けた。だけど彩色になると二度目をなぞるわけだし、しかもより手間がかかるのかと思ったら苦痛になってきた。

    で、上のかきさしの状態で手元にある

    今、この絵を眺めている。その頃の記憶がよみがえる。自分はブラスバンド部だった。全日本に行くような部活だったから夏休みはほぼなかった。いつ描いたんだろう。

    かあちゃんの盆栽を見るのが好きだった。なんといっても手がこんでいる。でもそれは中学2年生が見たほんのひとにぎりに過ぎない気持ちだった。

    今あらためて見直す。                                         かあちゃんは共働きだったから仕事の合間しか世話できなかった。盆栽は男、花は女、そんなイメージがある。当時は疑問なんて感じなっかったけど。ただ、ただながめていた。盆栽の面白さにはまっていたんだろう。自分には全く盆栽の趣味はないので何がいいのかわからない。だけどこの世界を絵には描いてみたいと思った。それなりに時間はかかったはずだ。断片しか思い出せない。はっきり思い出せるのは右上の柿の木、これは描くのに夢中になって真っ暗になってしまった。かかえて家の中に持って入り灯りの下でじっくり描いた。葉っぱの一枚一枚丁寧に描いている

    この時に戻りたい

    描くこと以外なんも考えていない。考える必要もなかったし

    かあちゃんはつかの間の休息だったのだろう。こんな手間のかかることして

    絵に描いといて本当に良かった。写真では感じないものが絶対にある。

    今、自分はいろんな絵を描いている。だけどかあちゃんの盆栽があったらまた描きたい。二度とこんな純粋な絵は描けないだろうけど。

    思い出してたら涙が出てきた

    話しはこれくらいにしとく

     

     

    あとはわかる範囲で描いてる物の説明しようかな

    ど真ん中にあるのは流木だ。形の良さそうなものを川原かどっかから拾ってきてあしらってる

    つつじだ   と思う自信ない。焚き火で焼きが入っていた

    左上がビワだ。右が柿で、助さん格さんみたいな配置になってる

    松、左上にかわいいサボテンが見える

    杉、割り箸で添え木してる。まっすぐにさせたいんだな。名札が立ってる。なぜなにも書いてない?

    何かわかんない。少し散ってるね。もが生えてる

    わかんない。竹?

    わかんない針葉樹。ちっちゃい庭石か?

    おっ、これはゆりだろう。右下はいちごが入っていたビニールパックだ

    手前の割りばしが笑える

    うしろがふき?しそ?スイカ?

    壊れたバケツまでかいてある。なんで中が石だらけかわからない

    もうわかんない

    この木目でかくのいやになった

    どだい夏休み中に仕上げるのは無理だったんだ

    かあちゃんの感想は聞けなかった。いつも何も言われたことない。おこられたこともない。見てはいるはずだ。目の前で描いてるときもあったんだから。

     

    いっぺん聞いてみたい

    この絵どう思う?


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